マイ・ニューヨーク・ダイアリー

カナダ、アイルランド映画「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」(My Salinger Year)を観ました。

2020年の作品。IMDb評価は6・5。ジョアンナ・ラコフの「サリンジャーと過ごした日々」が原作。1990年代ニューヨークを舞台に出版社でサリンジャーのファンレターを扱う仕事に就いた日々を描く実話を映画化。

ロサンゼルスに恋人を残したまま、ニューヨークの出版エージェントに就職をしたジョアンナ(マーガレット・クアリー)。彼女の仕事は主にサリンジャーのファンレターの返信をすること。また雑誌ニューヨーカーに書類を届けたり、サリンジャー本人からの電話に出たり、サリンジャーの本を出版するために出版会社を選んだり。直属の上司(シガニー・ウェイバー)が仕事上での長年の相棒が自殺し意気消沈していると、お見舞いにも行って慰める。ニューヨークでは恋人ができ、同棲もし始める。ウォードルフ=アストリアで「ティファニーで朝食を」を聞きながらスイーツを食べたり、仕事の出張と兼ねて恋人の演奏会に行ったり。手紙を書かないサリンジャーに代わって決まりきった型で返信することが気に食わず、自らの署名でファンに手紙を書き会社に知られ大ごとになったり。サリンジャー担当の助手なのに「ライ麦畑でつかまえて」を読んでいないジョアンナは、「ライ麦畑~」を読み始め、小説の中にロサンゼルスの恋人の姿を見出す。ニューヨークの恋人とは別れ、部屋を出ていく。仕事上では担当作家を持てるようになる。自らの詩集をニューヨーカーに持ち込んだ後、自分の会社に戻ると滅多に姿を見せないサリンジャーが来ていた。サリンジャーが脱いだコートに手紙を忍ばせておくと、最後にサリンジャーと対面…。

上司役のシガニー・ウェイバーが懐かしかった。今でも現役でバリバリな感じが頼もしかった。ジョアンナ役のマーガレット・クアリーが「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でヒッピーの女の子役を演じていたと知り、女優さんやはり恐るべしと思いました。まったくキャラが違くてびっくりした。

電話で日常的にサリンジャーと話をしていたジョアンナが「詩を少し書く」というと「少しの時間でも毎日書くこと」とサリンジャーからアドバイスをもらいます。物書きの彼女にとっては、サリンジャーと電話でやりとりするこのニューヨークで仕事した経験そのものが奇跡のような体験だったと思います。ニューヨークでの仕事というと「プラダを着た悪魔」や「マイ・インターン」を思い出し、サリンジャーの映画「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」も思い出します。それにしてもニューヨークに1か月滞在した時に、ウォードルフ=アストリアに泊まれないにしても、この映画のように中のカフェでスイーツくらい食べてくれば来ればよかったなあと思います。高級なところは全くスルーして旅行してた(何せ2年間のバックパッカーだった)ので仕方ないのですが、今となってはますます円安、世界の物価高で遠のいている。ニューヨーク舞台の映画を観る度に、ニューヨークの街が持つ独特な、エネルギッシュな雰囲気を思い出します。naonaoお勧め度★★★★

おまけ:この映画の本編一部とトレーラー

灼熱の魂

カナダ映画「灼熱の魂」(Incendies)を観ました。


灼熱の魂 Blu-ray

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  • 出版社/メーカー: アルバトロス

  • 発売日: 2017/10/04

  • メディア: Blu-ray






2010年の作品。IMDb評価は8・3。ヒューマンミステリードラマ。カナダのアカデミー賞であるジニー賞の作品賞を含む8部門の独占受賞。レバノン生まれでカナダに移住したラジディ・ムアワッドの戯曲「焼けこげるたましい」の映画化。観終わった後味がかなり良くない。宗教紛争、民族紛争の中、過酷な運命を辿らざるを得なかった人生を垣間見辛かったです。しかしシナリオが抜群で、見せ方がうまく夢中になって観ました。

母ナワルが亡くなった。双子の姉と弟のジャンヌとシモンは公証人から2通の手紙を受け取る。1通はジャンヌとシモンに兄がいるためその兄を探してその手紙を届けること。もう1通は父がいるのでやはり父を探して父に届けること。それを終えたら母の墓に名を刻むようにとの指示だった。ジャンヌにとってもシモンにとっても兄がいることや父が存命していることが青天の霹靂だった。

母ナワルの人生をたどる姉のジャンヌ。35年前ナワルは当時付き合っていた人の子供を宿す。その人は異教徒で殺される。子供を密かに出産するも世間体のためにその村にいられなくなり、ナワルは叔父の元に行き大学へ通い、子供は養子に出される。その時子供の足首に針で3つ刺しタトゥーを入れた。社会民族党の閉鎖、大学の閉鎖があり、ナワルは自分の産んだ子供を探すためバスで移動中キリスト教徒に襲撃される。自分はキリスト教徒だと言って、バスに乗る前に隠した十字架のペンダントを見せ命拾いする。孤児院は襲撃されており自分の産んだ子供がどこにいるのかわからない始末。その後キリスト教右派の指導者を銃殺し、政治犯としてクファリアットに13年間収監される。その間アブ・タリフにレイプされ子供を産むことになる。

最初姉のジャンヌが母の過去を調べ現地に赴き、後から弟のシモンが姉のジャンヌを探しに来ます。母の産んだ子供は孤児院が爆破されその後子供が軍人にさせられ、やがてクファリアットへ送り込まれ拷問人員となります。その時その子供はアブ・タレクと名乗るのです。母ナワルは自分の産んだ子供によってレイプされていたことがわかります。残酷な真実。そして生まれてきた子供というのが双子の姉と弟、ジャンヌとシモンでした。これもまた残酷な真実。ジャンヌとシモンはそのことを知り愕然となります。託された手紙は2通ともアブ・タレクに渡され、母の墓碑に名が刻まれました。プールで突然死した母は、実は足に3つ点が入ったタトゥーの男を見つけてました。それが引き金でショック死したのでした…。

映画ではどこの国のことだとはっきり示していないのですが、レバノンの内部紛争を描いています(原作もレバノン人)。イスラム教とキリスト教の宗教紛争が続き、パレスチナ人がレバノンに流れ込むとパレスチナ人がキリスト教徒に襲われ、そのバス襲撃を機に内戦へと発展。イスラエルがレバノンに侵攻撤退しレバノンには難民が今でもたくさんいます。

こんなにもむごい映画の結末がかつてあっただろうかと思う映画でした。真実に目をそむけたくなるし辛すぎると思いました。余りにもショックでしばらく立ち直れないくらい。ただ映画の見せ方が抜群で食い入るように観ました。たぶんシナリオも映像編集もうまいのだと思います。後味悪すぎですが観る価値はあります。naonaoお勧め度★★★★★

アロフト

カナダ、スペイン、フランス映画「アロフト」(Aloft)を観ました。


Aloft / [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: Sony Pictures

  • 発売日: 2015/09/29

  • メディア: Blu-ray






2015年の作品。IMDb評価は5.3。ジェニファー・コネリー主演。母と息子の確執を描いています。ジェニファー・コネリーの確かな演技力とキリアン・マーフィーの目の青さがとても印象的な映画でした。

母親ナナ(ジェニファー・コネリー)は次男の病気を治すことに必死で、半信半疑ながらもあるヒーラーの集まりに子供を連れて参加。余りにも人気なのでくじ引きのように白い石を引いた人だけがヒーラーの施術を受けることができるようになっていて、ナナは白い石を引くことができず肩を落とす。長男アイヴァン(キリアン・マーフィー)は退屈で飼っている鷹を飛ばすと、ヒーリングで使う枝で作ったトンネルに鷹が引っかかってしまい、最終的には人里離れた平原で鷹を置いていかなければ、乗ってきた車にまた乗ることはできないと言われ、泣く泣く鷹を離すがスタッフが銃で鷹を撃ってしまう。ショックを受けるアイヴァン。もう今は既に大人になり、結婚して子供のいるアイヴァンは、ジャーナリストのジャニア(メラニー・ロラン)に取材を受けているが全く気が進まない。母親がヒーラーとなり、幼い自分を捨てて家を出ており、取材は母親のところに一緒に行くことだった。アイヴァンは幼い頃、母がヒーリングをしている間、弟と二人で車に残され待ちきれず車を勝手に運転して湖で弟を溺死させてしまう過去を持っていた。そして母がいるところへジャニアと向かい何十年ぶりに再会すると、実はジャニアも病気を抱え、ヒーラーであるナナに施術を望んでいたのだった。ジャニアは白い石を引くことができなかったが、ナナは息子のアイヴァンに白い石をこっそり渡し、アイヴァンはジャニアにその石を渡すのでした…。

寒々しい風景がたくさん出てきます。秋から冬に向かうカナダの大平原。氷で覆われた湖。行けども行けども白い氷の世界。凍った氷が薄くなっている個所のある湖。この映画は夏の暑い盛りに観たのですが、夏に冬の映画を観るのも乙なものでした。医学で治らなければ藁にでもすがりたいと思う気持ちはわかります。でも果たしてそれが本当にいいのか悪いのか。そして結果的に家族を崩壊させてしまってまでやることなのか、やはりとても疑問が残りました。人は諦めの気持ちも大切なのだと思いました。母も息子もとっても傷ついて生きてきて、年月が経ち再会することで少しはお互いを理解し会えたのかなと思います。naonaoお勧め度★★★★

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

カナダ・アイルランド合作映画「しあわせの絵の具~愛を描く人 モード・ルイス」を観ました。



しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 松竹

  • 発売日: 2018/10/03

  • メディア: DVD






2016年の作品。IMDb評価は7・6。カナダの画家モード・ルイスの半生を描く。絵が可愛らしく、グランマ・モーゼスをもっと植物なり動物なりをズームアップした感じの絵だなあと思いました。この映画によってモード・ルイスの存在を知ることができて良かったです。


リウマチのために足を引きずって歩くモード(サリー・ホーキンス)は、魚の行商人エベレット(イーサン・ホーク)が家政婦の広告を出しているのを見て、彼の家に押しかけ住み込みで働くことにします。初めはギクシャクしてうまくいかなかったけれど、二人は次第に心を通わせ結婚することに。ニューヨークから来ていたサンドラがモードが家の中に描いていた絵を見て、彼女に絵を描いてくれるよう依頼。その後評判となりニクソン大統領からも注文が来るようになるのです…。


兄にも叔母にも邪見にされ、居場所のないモード。エベレットは孤児院育ちで不愛想。住み込みの家さえも電気もなければ水道も通っていない小さな家。彼女自身はリウマチなので歩くのも不自由だし、少しずつ手も言うことが効かなくなります。二人がそれでも何とか夫婦となってお互いがなくてはならない存在となり、モードの絵も評判となり売れていきます。本当に良かった。実際の彼女の絵がカナダの美術館にあり、家の中に描かれた絵も残っているらしいので、いつかまた旅行できるときが来たら行って実際に観てみたいなあと思います。楽しみが増えました。

ミスター・ノーバディ

2009年のフランス・ドイツ・カナダ・ベルギー合作映画「ミスター・ノーバディ」を観ました。






ミスター・ノーバディ [DVD]

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    • 出版社/メーカー: 角川書店

    • 発売日: 2012/10/25

    • メディア: DVD







難しい、でも面白い、深い映画でした。この映画の解釈は人によってまちまちだろうなあと思いました。もう一度、いや何度か観直してこの映画の解釈をいろいろ考えてみたくなる、そんな映画でした。



2092年の話。既に科学技術が進歩して死というものが無くなっている世界にあって、死を迎えようとする最後の人間となった118歳の主人公のニモ。彼がどんな人生を送ったのが、医師の催眠術や、記者のインタビューで彼の人生を探ろうとします。しかし、9歳のときに父母が離婚したときに、父について行った人生を語り、また母について行った人生を語りだします。そして父について行ったがために出会った女性との恋愛、結婚もいくつかに分かれ、また母について行ったがために出会った女性との恋愛も、うまくいってる感じとそうでない感じに分かれ、一体どの彼が本当の彼だったのか、見ているこちらまでわからなくなるのです。彼が就いた職業も枝分かれした人生に応じて科学者やら水道管屋さんやら浮浪者やら…と様々で、このニモの人生は一体何だったのか?とても不思議な世界に迷い込むことになります。



パラレルワールド、ということなのでしょうか。選ばなかった人生もまた存在して、自分の分身がまた違った人生を体験しているのでしょうか。



人生で選択することはたくさんあって、あの時こちらの道を取らずあちらを取っていたら違っていただろうと、よく言います。でもどちらを取っても結局のところ今の場所にいる、という人もいます。でもとにかく人生はどれかを選ばなければ進んでいきません。

必ず何かを選択して年を取って人生の駒を進めます。ただ、選ばなければ可能性は無限大です。だから子供の人生は無限です。選び取っていない、これから選ぶからです。



映画の中で、主人公のニモがこの世に出てくる前に、たくさんの子供たちと一緒にこの世のこと、自分の人生を見せられ、ただ誕生直前に天使が子供の口に指をあてその記憶を失くすのですが、ニモだけがそれを忘れられてしまったようでした。だから自分の選択によってこんな人生がある、こんな人生もあるよ、と覚えていて、本当はその中の最も自分の好きな人生のひとつを送ったのかなあと思います。最後亡くなる前に、最も人生で愛した女性の名前「アンナ」の名前を叫んで死ぬのですが、アンナとの人生を選ぶように人生の分岐点でもそのようにしたのかもしれません。よくわからないですが。



最後のほうで118歳のニモが、こう語ります。

「私が生きた道はどれも真実だ。

どの道も正しい道だった。

人生には他のどんなことも起こりえただろう。

それらには同等の意味があったはずだ。

テネシー・ウィリアムズだ。

年を取ったらわかるはずだ」

こんな言葉を残しています。



どんな道を選んでも本当は何も変わらないのかもしれません。つまり経験できるという点で、どの経験も大切だから。テネシー・ウィリアムズのどの小説でこの言葉が語られているのかも、気になるところですが、時間があったら小説を読んで探してみたいです。



またバタフライエフェクトを映像で見せ、枯れ葉が子供のニモに瀕死の重傷を負わせたり、車がスリップして車ごと湖の中に入ってしまったり、最後は父母を選ぶときにニモが枯れ葉を飛ばしてみせることをやってみたりしています。ニモが枯れ葉を飛ばすことは、もしかしたら誕生前に見せられた人生でない違う人生を選ぼうとしたニモがいたのかもしれないとふと思いました。



科学者らしいニモが映像の前で、エントロピーやビックバン、ビッククランチなども説明していきます。



この映画を観ていると人生は可能性に溢れている、幸も不幸も色んなものが混ざってどんな人生もアリだよ、と言っているかのようです。世界旅行をしていた時に感じた人生の可能性、何でもいいじゃないかと思えた同じような感情を今、思い起こしました。



[ぴかぴか(新しい)]P.S.[ぴかぴか(新しい)]

今テレビでやっている「いいね!光源氏くん」こちらもタイムスリップもの。光源氏が現代にやって来て感動するとところ構わず和歌を詠む。光源氏役の千葉雄大くんの可愛さに加え、平安貴族ならではの所作も優美でほれぼれ。OL役の伊藤沙莉ちゃんとのコンビネーションもいい。タイムスリップの物語は楽しい~。